「キレイキレイのパッケージに描かれてる親子の絵、どこか“ぼくのなつやすみ”に出てきそうじゃない?」
そんな声がSNSで聞かれるようになったのは、ここ数年のこと。手をつなぐ親子のやわらかな線、控えめな笑顔、ほんのりくすんだやさしい色合い──それはまさに、プレイステーションの名作『ぼくのなつやすみ』シリーズに登場するキャラクターたちを思い出させる、あの懐かしさと安心感に満ちた世界です。
実はこの「なんか似てる」という直感、偶然ではありません。
驚くことに、キレイキレイのパッケージと『ぼくのなつやすみ』のキャラクターたちは、同じイラストレーター・上田三根子さんによって描かれているのです。広告や商品パッケージの世界と、家庭用ゲームの世界。そのどちらにも、“懐かしいのに古くない”“あたたかいのに説明しすぎない”独特の世界観を届けるこのイラストレーターの存在が、静かに橋をかけていたのです。
本記事では、「似てる」と話題になった背景をはじめ、上田三根子さんの作風やこれら2作品に共通するデザインの特徴、そしてなぜ多くの人が心惹かれるのかを深掘りしていきます。キレイキレイとぼくなつ──その間に横たわる、静かな“つながり”を、ぜひ一緒にたどってみませんか。
キレイキレイとぼくのなつやすみ 似てると感じたきっかけとは?
ある日、キレイキレイのハンドソープを手にした瞬間、ふと胸の奥に懐かしさを感じた。そんな経験、ありませんか?
「この絵、どこかで見たことがあるような…」と考えた末に、『ぼくのなつやすみ』のキャラクターたちが脳裏をよぎった方もいるかもしれません。
実際、SNSでは「キレイキレイのキャラ、どう見ても“ぼくなつ”の世界の人だよね」「絵柄そっくりだけど、もしかして同じ人が描いてる?」といった声が少しずつ広がりを見せてきました。見た目が似ているだけでなく、「絵から伝わってくる空気感が同じ」「あの懐かしさに包まれる感じがそっくり」と、“似ている”以上の共通点に気づく人も増えています。
面白いのは、こうした声が一部の熱心なファンだけでなく、日用品としてキレイキレイを使っている多くの人々から自然と出てきたことです。ゲーム好きも、子育て中の親も、たまたま通りがかったスーパーで手に取った人も。「なんとなく似てる」「あれ、これって…」という感覚が、静かに共感として広がっていきました。
ここでは、そうしたSNS上のリアルな反応を拾いながら、多くの人が“似ている”と感じるに至ったきっかけや背景を探っていきます。何気ない気づきの中に、大きな共通点が隠れているかもしれません。
キレイキレイとぼくのなつやすみ SNSの口コミ
「キレイキレイのキャラって、絶対“ぼくのなつやすみ”の世界にいそう」
「この絵柄、懐かしすぎる。絶対どこかで見たと思ったら“ぼくなつ”だった!」
こうした声は、Twitter(現X)やInstagramなど、SNSを中心にじわじわと増えています。とくに話題になりやすいのが、キレイキレイのボトルを写した写真と一緒に添えられるコメント。なかには“#ぼくのなつやすみ風”というタグと共に投稿されている例もあり、絵柄の共通性があることを前提に楽しんでいるユーザーも見られます。
面白いのは、「似てる気がするけど、名前が出てこなかった」「子どもの頃から見ていたのに、最近まで気づかなかった」という声が多いこと。つまり、“あの絵柄”が記憶の中にしっかり根付いていて、何かをきっかけにふとリンクするというケースが多いのです。それがキレイキレイのボトルだったり、テレビCMだったり、ふとした再会からだったり。気づいた瞬間に一気に懐かしさがこみ上げ、SNSで共感を求めたくなる──そうした流れが、この話題の背景にあります。
さらに、「本当に同じ人なのか調べた」「名前を見て納得した」という投稿も多く、検索から上田三根子さんの存在にたどり着いた人も少なくありません。「やっぱり同じだったんだ!」という驚きと納得がセットで語られているのが印象的です。
最近では、X上で「キレイキレイのキャラって上田三根子さんだったんだ…納得」「ぼくなつの優しい絵柄と一緒だって気づいてちょっと感動」といったリプライがリツイートされ、ちょっとした“発見系豆知識”のような広がり方をしています。中には「このつながりを知ってから、キレイキレイを見るたびに“ボクくん”が浮かぶようになった」という声もあり、イラストの影響力の大きさをあらためて感じさせます。
SNSという日常の中にある場だからこそ、「なんとなく感じたこと」を気軽に共有できる土壌がある。その中で自然発生的に広がった「似てる」現象は、単なる偶然ではなく、多くの人が心のどこかで共有していた感覚だったのかもしれません。
「キレイキレイ=ぼくなつっぽい」と感じる理由
「なんとなく似てる」──そう感じたことはあっても、どこがどう似ているのかまでは言葉にしづらい。けれど、キレイキレイと『ぼくのなつやすみ』を見比べてみると、その“感覚の正体”が少しずつ見えてきます。
まず大きいのは、キャラクターの表情と存在感の描かれ方です。キレイキレイの親子イラストは、感情を強調するような表情ではなく、穏やかで控えめな笑顔が特徴。どこか無口そうな佇まいなのに、そこには確かな温かみがあります。これは、『ぼくのなつやすみ』の登場人物たち──ボクくんやおじいちゃん、おばあちゃん──にも通じる部分です。派手ではない、でも忘れられない。そんな印象が共通しています。
さらに、線のタッチや色のトーンも共通点のひとつ。輪郭線は太すぎず細すぎず、自然体な“手描き感”があり、配色もどこか懐かしいくすみ感を含んだパステル系。全体に漂うのは、“今っぽくない”のに古びてもいない、普遍的な優しさです。
もうひとつ注目したいのは、構図やポージングのシンプルさ。たとえば、キレイキレイのパッケージでおなじみの「手をつなぐ親子」や「並んで笑う兄妹」の姿は、どこかで見たことがあるような生活感を思わせます。『ぼくのなつやすみ』でも、そうした何気ない日常の一場面が大切に描かれており、「特別なことは起きないけど、ずっと心に残る」風景が共通しています。
加えて、“時代を感じさせない普遍性”も重要です。キレイキレイのキャラが登場したのは1997年、『ぼくのなつやすみ』の発売は2000年。どちらも20年以上前の作品ですが、今見ても「古い」と感じないのは、デザインが時代に流されていないから。むしろ“今の時代だからこそ刺さる懐かしさ”として、多くの人の心に響いているのかもしれません。
こうして見ると、「似てる気がする」という直感は、実は非常に理にかなっていたのだと気づかされます。ただ絵柄が似ているのではなく、人の心に残る“感情の質感”が共通している。それこそが、キレイキレイ=ぼくなつっぽいと感じさせる理由なのです。
キレイキレイとぼくのなつやすみ 「なんか懐かしい」の正体は
キレイキレイのパッケージを見て、「あっ、なんか懐かしい」と感じたことはありませんか?
あるいは、『ぼくのなつやすみ』の画面を見たときに、思い出したわけでもない昔の記憶が、ふと浮かんできたことは? そうした感覚は、多くの人が口にするけれど、うまく言葉にはしづらいものです。でもその「懐かしい」という感情には、ちゃんと理由があります。
まず、上田三根子さんのイラストは昭和〜平成初期の日本の家族像や生活風景をベースにした“空気”をまとっていることが挙げられます。そこには、麦わら帽子、蚊取り線香、裸足で庭を駆ける子ども、団扇を持つお母さん、そんな“昔ながらの夏の一日”が静かに流れているのです。実際には経験していないのに、なぜか自分の記憶の中にあるような気がしてくる──その感覚が「懐かしい」と結びつきます。
また、イラストの中に時間の流れを感じさせない“止まった瞬間”が描かれていることも特徴的です。手を洗っている、挨拶をしている、並んで笑っている──それだけの場面なのに、背景やセリフがなくても、その人たちの暮らしや関係性が見えてくる。こうした“静かな語りかけ”のあるイラストは、記憶の底に残る感情と自然につながりやすいのです。
さらに、上田さんの画風には、**誰もが知っているようで誰の顔でもない“余白”**があります。表情が控えめで説明しすぎないことで、見る側の記憶や気持ちが重ねやすくなる。つまり、「これは私の思い出かもしれない」「自分の子ども時代に似てる」と自然に感じさせてくれるのです。
キレイキレイのパッケージを通して『ぼくのなつやすみ』を思い出す人がいるのも、ただの絵柄の一致ではなく、記憶の感触が似ているから。そしてその感覚は、世代を問わず多くの人の心に響いています。
「なんか懐かしい」──それは、上田三根子さんのイラストが持つ、記憶を刺激する力そのものなのかもしれません。
キレイキレイとぼくのなつやすみ 実は同じ人が描いていた?

※上田三根子さんイメージ
「なんか似てる」「絵の雰囲気がそっくり」と感じていた人たちの中には、実際に調べてみて驚いた方も多いかもしれません。
そう、キレイキレイの親子キャラクターと、『ぼくのなつやすみ』シリーズに登場する登場人物たち──その両方を手がけているのが、イラストレーターの上田三根子(うえだ みねこ)さんなのです。
広告や商品パッケージ、雑誌のイラストからゲーム作品まで、ジャンルを超えて愛される上田さんのイラストには、一目見ただけで心をつかまれる“やさしさ”と“あたたかさ”があります。その作風は、ただかわいいだけでなく、どこか懐かしく、でも決して古びない不思議な魅力にあふれています。
この記事では、そんな上田三根子さんがどんな人物なのか、そしてどのようにして「キレイキレイ」や「ぼくのなつやすみ」の世界を作り出していったのか、その背景に迫っていきます。イラストの裏側にある物語を知ることで、あの“似ている感覚”の正体がより深く理解できるはずです。
上田三根子さんのプロフィールと代表作
上田三根子(うえだ みねこ)さんは、1949年、埼玉県生まれのイラストレーターです。
セツ・モードセミナーでイラストレーションを学び、在学中からイラストの仕事を始め、以後長きにわたって広告・雑誌・書籍・テレビ番組など幅広い分野で活躍してきました。
彼女の作風は、明るく親しみやすい色づかいと、柔らかで温かみのある線が特徴。子どもから大人まで心を和ませるような人物描写に定評があり、どこか懐かしさを感じるそのスタイルは、今もなお世代を超えて多くの人々に愛されています。
代表作の一つが、ライオン株式会社の薬用ハンドソープ「キレイキレイ」シリーズのキャラクターイラストです。1997年の発売以来、親子が手をつないでいるパッケージデザインで広く認知されており、上田さんのイラストは商品の顔として多くの人の記憶に残っています。
また、2000年にソニー・コンピュータエンタテインメントから発売されたゲーム『ぼくのなつやすみ』シリーズのキャラクターデザインも、彼女の代表的な仕事のひとつです。ゲームの世界観と親和性の高い、やわらかで素朴なタッチのイラストは、多くのプレイヤーにノスタルジーを呼び起こし、シリーズの印象を決定づける要素となりました。
その他、NHKの『きょうの料理』『おしゃれ工房』のタイトルバックや、雑誌『フォアミセス』(秋田書店)の表紙、教育書や絵本の挿画なども多数手がけています。
長年にわたり描き続けてきた上田さんの作品は、「懐かしさ」「あたたかさ」「安心感」といった感情をさりげなく表現し、私たちの生活の中に自然と溶け込んでいます。
まさに、「キレイキレイ」と「ぼくのなつやすみ」という一見異なる世界を、ひとつの線と色でやさしくつないでいる存在と言えるでしょう。
『キレイキレイ』のキャラクターはいつから登場?
今ではすっかりおなじみとなった、親子のキャラクターが描かれたキレイキレイのパッケージ。
このキャラクターたちが初めて登場したのは、商品が発売された1997年のことです。当時、薬用ハンドソープ市場はまだ大きくなく、「手洗い習慣」を家庭の中に浸透させるには、ただの洗剤ではない“親しみやすさ”が求められていました。
そこで起用されたのが、イラストレーターの上田三根子さんでした。彼女が描く母親とふたりの子どもたちは、どこにでもいる普通の家族。けれど、その絵には見る人の心にすっと入ってくるやさしさと、どこか懐かしい安心感が込められていました。手をつないで並ぶ3人の姿は、単なるデザインではなく、母親が子どもに「手を洗うことの大切さ」を伝える瞬間を象徴していたのです。
このパッケージデザインは、当時としてはかなり珍しいものでした。生活用品のパッケージに、イラストキャラクターを用いるという手法自体が斬新だったこともあり、「売れなかったらどうしよう」と上田さん自身もプレッシャーを感じていたと語っています。
しかし、結果は大成功。キレイキレイは発売からわずか数年で市場をリードするブランドへと成長し、親子キャラはその象徴として定着していきます。定期的なリニューアルを経ながらも、現在に至るまで一貫して上田さんの手によるキャラクターが使われており、その構図や表情は時代とともに少しずつ変化しながらも、根底にある家族のやさしさというテーマは変わっていません。
特に最近のパッケージでは、親子が対等に寄り添いながら笑顔を交わす姿が描かれています。初代パッケージの「教える母と学ぶ子ども」から、「一緒に手を洗う仲間としての親子」へ。時代の価値観の変化を反映しながらも、絵が持つぬくもりは変わらず、多くの人に愛され続けています。
キレイキレイのキャラクターが登場したのはただの“パッケージの飾り”ではなく、生活習慣の中にやさしく入り込むためのひとつの提案だったのです。そしてそれを支えているのが、上田三根子さんの変わらない感性なのです。
『ぼくのなつやすみ』ではどんな役割を担当したのか
2000年にソニー・コンピュータエンタテインメントから発売された『ぼくのなつやすみ』。プレイヤーが昭和50年代の夏休みを体験するという、当時としてはとてもユニークなコンセプトのゲームでした。その作品世界を、視覚的にやさしく彩ったのが、イラストレーター上田三根子さんです。
上田さんがこの作品で担当したのは、キャラクターデザインです。主人公である「ボクくん」はもちろん、おじいちゃんやおばあちゃん、親戚のお姉さん、町の人たちなど、登場人物たちの姿はすべて、上田さんの柔らかで親しみのあるタッチで描かれています。
特徴的なのは、どのキャラクターも表情が派手ではなく、どこか控えめな印象であること。にもかかわらず、彼らの人柄や関係性が画面から自然と伝わってきます。これはまさに、「語りすぎずに伝える」上田さんの持ち味が発揮された場面だといえるでしょう。
ゲームのパッケージイラストや販促用ビジュアルにも、上田さんのイラストが前面に使用されました。虫取り網を持ったボクくんが大きな空の下を歩く姿や、家の縁側で家族が過ごすシーンなど、いずれもプレイヤーの記憶に深く残るものばかりです。
開発を手がけたミレニアムキッチンの綾部和プロデューサーは、上田さんのイラストに惹かれ、「この人の絵でゲームを作りたい」と直接依頼したと言われています。実際、『ぼくのなつやすみ』の後続作品でも継続して上田さんのタッチが活かされており、シリーズ全体の世界観を支える柱のひとつとなっています。
また、興味深いのは、上田さん自身がゲームをよく知らなかったにもかかわらず、この仕事をきっかけに「イラストがゲームの体験そのものに影響を与える」ことの面白さを実感されたという点です。言葉で説明しきれない空気や情感を、ビジュアルでそっと補完する。上田さんのイラストは、まさにその役割を見事に果たしていました。
『ぼくのなつやすみ』のあの懐かしくも温かい世界に、上田三根子さんの絵があったからこそ、プレイヤーは「自分だけの夏休み」を強く心に刻むことができたのです。
キレイキレイとぼくなつに共通するイラストの魅力とは?
キレイキレイのパッケージと、ぼくのなつやすみのキャラクターたち。
どちらも「似ている」と感じる理由には、単に絵のタッチが似ているだけではない、もっと深い共通点があるようです。
それは、上田三根子さんが描く“人と空気のあいだ”にある、やさしさや懐かしさ。色づかい、線の引き方、構図、そして登場人物のふるまいすべてに、共通する感情の温度が流れています。
この記事では、2つの作品を並べて見比べながら、なぜ見ただけで「ほっとする」「懐かしい」と感じるのか、そのビジュアル面での秘密に迫っていきます。絵柄の共通点を探ることは、心の奥にある記憶や感覚を紐解く旅でもあります。
線のタッチと色づかいに共通する温かさ
キレイキレイとぼくのなつやすみのイラストに共通して感じられるのは、やさしくて、どこか懐かしい温かさです。
線は細すぎず、太すぎず。手描きの風合いが残っていて、輪郭がやわらかく見えるのが特徴です。人物も背景も、角のない丸みを帯びたフォルムで描かれており、見ているだけで安心感が広がります。
色づかいも独特です。派手な原色は使わず、くすみのある淡いトーンやパステル調が中心。たとえば、空の青も少しだけグレーがかっていたり、肌の色もふんわりと柔らかく塗られていたり。こうした色彩のトーンが、全体の印象をぐっと落ち着かせてくれます。
見た瞬間に“目が疲れない”“どこか懐かしい”と感じる理由は、こうした線と色のバランスにあります。描かれているのは何気ない日常のワンシーンなのに、それがすっと心にしみ込んでくる。そんな感覚が、どちらの作品にも共通しているのです。
構図・登場人物の配置・空気感の一致
キレイキレイとぼくのなつやすみのイラストを見比べると、どちらも登場人物の立ち位置や空間の使い方がとても似ています。
まず、人物は中央に寄せすぎず、少し余白を持たせた位置に描かれることが多いです。たとえば、親子が横並びに立っていたり、縁側に腰かけていたりと、**“動きのない自然体の姿”**が多く、見る人にゆったりとした空気を感じさせます。
背景が描かれていない場合でも、そこには“空間”が存在しています。人物のまわりに余白があることで、見る側はその場の温度や風の流れまで想像できるような、静かな余韻が生まれます。
また、登場人物同士の距離感も絶妙です。親子、兄妹、友人、祖父母と孫──いずれも言葉にせずとも関係性が伝わるような距離で描かれ、「家族のぬくもり」や「夏の記憶」がふっと浮かぶような感覚をもたらします。
絵としてはとてもシンプルなのに、そこに人の暮らしや気配がにじんでいる。それこそが、両作品に共通する“空気感の一致”なのです。
昭和っぽさとノスタルジーの演出手法
キレイキレイとぼくのなつやすみ、どちらのイラストにも共通して漂うのが、「昭和っぽさ」と呼ばれる感覚です。けれど、それは単にレトロなデザインということではなく、もっと深いところにある“情緒”のようなものが表現されています。
たとえば、服装や髪型。現代風ではないけれど、特定の年代にも偏りすぎない、ごく一般的な日常着が描かれています。誰でも「ああ、こんな感じだった」と思い出せるような、過去の記憶にそっと重なるデザインです。
また、小道具にも懐かしさがにじみます。麦わら帽子、虫取り網、風鈴、洗面器、泡立てた石けん。これらは特に説明しなくても、「夏」や「子ども時代」を直感的に連想させるアイテムたちです。絵の中に小さく置かれているだけで、その空間に温度や音が生まれます。
そしてなにより、イラスト全体の演出が“静けさ”を大事にしています。笑顔も騒がしさはなく、背景も語りすぎない。見る人が自分の記憶や体験を自然と重ねられるような作りになっているのです。
こうした演出の積み重ねが、ただの懐古ではない、“記憶をくすぐるノスタルジー”を生み出しています。昭和そのものを描いているわけではないのに、なぜか昭和を思い出す。それは、イラストに宿る空気感が、私たちの中にある原風景とつながっているからかもしれません。
キレイキレイとぼくのなつやすみ なぜ心に刺さるのか
キレイキレイも、ぼくのなつやすみも、見た人の心にじんわりと残るのはなぜなのでしょうか。
それは、キャラクターの表情や構図だけでなく、“感情の設計”がとても丁寧に行われているからです。押しつけがましくなく、でも確かに伝わる。そんなバランス感覚が、上田三根子さんのイラストには詰まっています。
この記事では、イラストの中にどのように感情が組み込まれているのか、その工夫や仕掛けを見ていきます。言葉は少なくても、見るだけで心が動く理由を、一緒にひも解いていきましょう。
日常の一瞬を切り取る描き方の妙
上田三根子さんのイラストには、大げさな動きや演出はありません。
でも、ふとしたしぐさや目線、手の角度から、その瞬間の空気や感情がしっかり伝わってきます。
たとえば、子どもが石けんで手を洗っている姿。何気ない場面なのに、どこか誇らしげに見えるのは、その手元に込められた丁寧さや、そばで見守る親のまなざしが想像できるからです。
『ぼくのなつやすみ』でも同じです。虫取り網を持って空を見上げるボクくん、縁側で麦茶を飲む家族。その描写は一瞬なのに、見る側はその前後の時間まで自然と想像してしまうのです。
日常のごく普通の風景に、感情の余白を残して描く。そこに、絵を見た人の記憶や感情がそっと重なり、強く心に残るのです。
キャラクターに“説明しすぎない”余白を残す工夫
上田三根子さんのキャラクターは、表情がとても控えめです。
にっこり笑っていても、口は小さく、目も点のようにシンプル。それなのに、やさしさや安心感がしっかり伝わってきます。
これは、あえて感情を強調せず、“見る人が想像できる余白”を残しているから。誰かに似ている気がする、昔の自分を思い出す。そうやって、見る側が自由に感情を重ねられるように設計されています。
説明しすぎないからこそ、言葉に頼らずとも伝わる。だからキレイキレイの親子も、ぼくなつの登場人物たちも、「見ただけで好きになれる」のです。
その“余白”が、イラストに奥行きを与え、心に静かに入り込んでくる大きな理由になっています。
「懐かしいけど古くない」イラストの魅力
上田三根子さんのイラストを見たとき、真っ先に「懐かしい」と感じる人は多いと思います。
でも、よく見ると不思議なことに、絵はまったく“古さ”を感じさせません。
それは、使っている色やモチーフが昭和風でも、描き方が時代に依存していないからです。表情や構図に流行を追うような派手さがなく、どの時代でも通用する自然体のデザインで成り立っています。
また、人物の服装や背景にある小物も、“レトロ”に寄せすぎていません。あくまでリアルな日常を切り取ったものとして描かれており、だからこそ現代の人にも違和感なく受け入れられます。
懐かしさと普遍性。このふたつが絶妙に混ざり合っていることで、イラストは長く愛され続け、どの世代にとっても「自分の記憶にある風景」のように感じられるのです。
キレイキレイとぼくのなつやすみはなぜ似てる? まとめ
- SNSで話題に!「似てる」と感じたきっかけとは?
- キレイキレイとぼくのなつやすみの絵柄が似ているとSNSで話題に
- 「懐かしさ」「やさしい雰囲気」など、共通する印象が多くの共感を集めた
- 見た人の記憶と結びつきやすい“空気感”が共通点の一因
- 実は同じ人が描いていた?上田三根子さんとは
- 上田三根子さんは1949年生まれ、セツ・モードセミナー出身のイラストレーター
- キレイキレイのキャラクターは1997年から、ぼくのなつやすみのキャラは2000年から担当
- 親しみやすさと情緒を兼ね備えた画風で、生活に寄り添う作品を多数手がけている
- キレイキレイとぼくなつに共通するイラストの魅力とは?
- 線のタッチや淡い色づかいに、見た人を和ませる温かさがある
- 登場人物の配置や構図に“生活の余白”があり、自然な空気感を演出
- レトロすぎず、現代にもなじむ“懐かしさと普遍性”を両立している
- なぜファンの心に刺さるのか?イラストの感情設計を読み解く
- 日常の一瞬を丁寧に切り取ることで、共感や思い出を引き出す
- 表情や描写に“説明しすぎない余白”を残し、見る側の記憶と重なりやすい
- 「懐かしいけど古くない」絶妙なバランスで、世代を問わず愛されている
キレイキレイと、ぼくのなつやすみ。
まったく違うジャンルの作品なのに、どこかつながっているような気がする──そんな感覚をたどっていくと、そこには上田三根子さんという一人のイラストレーターの存在がありました。
懐かしいけど古びない、やさしいけれど説明しすぎない。
そんな絵の力が、私たちの心の中にある記憶や感情に静かに触れてくれるのだとあらためて感じます。
この記事が、日常にふと紛れ込んだ“懐かしさの正体”を知るヒントになり、イラストが持つ奥深さや魅力に、少しでも触れていただけたなら嬉しいです。
何気なく手に取った日用品やゲームのひとコマにも、実はたくさんの思いと工夫が込められている──そんな視点で、また明日からの暮らしを見つめてみてはいかがでしょうか。



